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銅加工の専門家が、銅素材の基礎知識を解説

加工可能な銅素材

銅加工の専門家が、銅素材の
基礎知識を解説

銅加工・鋼加工のプロフェッショナル「株式会社ハタメタルワークス」が、
銅加工で使用される主な銅素材について解説いたします。高品質の銅加工を実現するためには、技術の向上や設備の導入だけでなく、用途に合わせた最適な素材選択が必要です。
こちらではそれぞれの素材の特徴やメリット、主な用途について詳しくご紹介します。

material銅加工に用いる2種類の「銅」

銅加工に用いる素材は、主に「純銅(じゅんどう)」と「銅合金(どうごうきん)」の2種類です。それぞれの特徴は、以下のとおりです。

純銅

純銅は、工業用に製造された高純度の銅のことです。純銅は、溶解の過程で残った酸素量によって、以下の3種類に分けられます。

  • タフピッチ銅
  • りん脱酸銅
  • 無酸素銅(OFHC銅)

純銅に該当する銅素材は99.95%以上の純度を有し、そのなかでも99.99%以上の純度を誇る真空溶解銅は「最高級純銅」と位置づけられます。

銅合金

銅合金はその名のとおり、銅を主な原料とした合金のことです。鉛やアルミニウム、ニッケルなどの金属が用いられることが多く、組み合わせた素材によって強度や被削率に違いが生じます。銅合金には、主に以下のような種類があります。

  • ベリリウム銅
  • クロム銅
  • 銅タングステン

他の金属を添加して合金とすることで銅が持つ本来の性質は弱まりますが、剛性などの異なる性質が改善されます。

material銅加工に用いる「純銅」の種類・特徴

無酸素銅

タフピッチ銅

耐食性や耐候性が高く、建築や自動車用部品に好適

純度99.90%以上で、微量の酸素を含む純銅です。導電性や熱伝導性、加工性が高く、絞り加工、曲げ加工、伸ばし加工に向いています。優れた耐食性や耐候性を持ち、主に化学工業や器物、建築や自動車用部品などに使用される素材です。ただし、600℃以上に加熱すると、内部の残存酸素が水素と反応し、水蒸気が発生して亀裂が入るリスクがあります(水素脆化)。そのため、水素を含む還元性ガスのある環境下での高温加熱や、溶接を必要とする用途には不向きといえるでしょう。

リン脱酸銅

水素脆化のリスクが少なく、加工性に優れた素材

脱酸銅とは、金属または非金属の脱酸剤を微量に含む銅(酸化銅は含まない)のことです。リン脱酸銅はそのなかでも、リンによって混入した酸素が除去されたものを指します。リン脱酸銅を使用する最大のメリットは、加工性の高さにあります。特に、絞り加工や曲げ加工、伸ばし加工に適しており、溶接性や熱伝導性にも優れた素材です。導電率はタフピッチ銅と比べてやや低めですが、酸素を含まないため、ロウ付けや溶接のような高温・還元性雰囲気下での加工を必要とする部品に向いています。

無酸素銅

酸素をほとんど含まない高純度の純銅

酸素をほとんど含まない純銅です。酸素量は0.001%~0.005%程度で、純度99.96%以上と、純銅のなかで最も純度の高い素材です。電子管に使用するものには、純度99.99%以上の純銅が求められます。酸素がゼロに等しいため、高温・還元性雰囲気下において水素脆化を起こすリスクがありません。そのため、電子機器やブスバー、熱交換器、化学工業用など、幅広い用途で使用されています。また、添加元素がないため、銅本来の導電性、熱伝導性、加工性を存分に発揮できます。

material銅加工に用いる「銅合金」の種類・特徴

銅加工に用いる2種類の「銅」

ベリリウム銅

銅本来の特性に、強度と弾性をプラスした素材

銅に数パーセントのベリリウムを添加した銅合金です。導電性や熱伝導性、耐食性など銅本来の素晴らしい性質を活かしながら、ベリリウムを加えることで高い強度と弾性(しなやさか)を兼ね備えています。さらに、耐摩耗性や耐食性も高いのも特徴です。このように様々な特性を兼ね備えたベリリウム銅は、自動車や携帯電話、パソコンや通信機器など、幅広い用途で使用されています。

クロム銅(クローム銅)

高温でも長時間使用可能な銅合金

銅に0.4~1.2%程度のクロムを添加した銅合金です。非常に高い導電性を持ち、熱伝導性・耐熱性・耐食性・硬度にも優れています。高温の環境下でも長時間使用でき、半導体や液晶用のバッキングプレート、ガスタービンや蒸気タービン用軸受の裏金、製鉄所内スカーフィングマシン関連部品、各種抵抗溶接用電極材など幅広い用途に使用されます。

銅タングステン(銅タン)

導電性と切削性が高く、使い勝手の良い高級銅合金

銅に70~80%程度のタングステンを添加した銅合金です。現場では「銅タン」と呼ばれることもあります。金属のなかでも最も融点が高いタングステンを添加することで、高い熱伝導性と硬度、耐摩耗性を実現しています。また、加工性にも優れており、耐熱性が高く膨張係数が低いことから、型彫り放電加工や抵抗溶接の電極などの用途に使用されます。導電性と切削性が非常に高いため、なにかと使い勝手の良い素材です。タングステンは金属のなかでも比較的高価なため、銅タングステンも高級素材として扱われています。